パフィオペディルムを上手に育てることは、パフィオペディルムの愛好家には永遠のテーマである。パフィオペディルムは生育が遅いばかりでなく、根が全く無くても、ある程度の湿度を保って日陰においておけば、半年くらいは葉をいかにも健全そうな状態に保持することができる。従って、パフィオペディルムを栽培しているとき、栽培がうまく行っているかどうかを判断することが難しい。この判断の最良の方法は、根が伸長しているかどうかを確認することである。しかし先に述べたように、パフィオペディルムの生育は極めて遅いため、根の伸長が進んでいないからと言って健全な状態ではないとは限らない。品種やその状態によっては、植え替えてから数カ月、長いものでは一年近く成長が停止している場合もある。厳密な見方をすれば、新たに成長を始めた根が順調に伸びるかどうかを確認することである。しかし、鉢の中の状態を確認することができないので、実際に健全に生育しているかどうかを判断することは難しいのは確かである。
多くの初心者はパフィオペディルムに興味を持ち始めると、珍しい品種や入賞個体などの高級な品種を手に入れようと夢中になることがある。しかし、相手は植物という生き物なので、切手や美術品のようにただ並べて置いておくというようなことはできない。パフィオペディルムに興味を持ったら、まず上手に栽培できるようになる事が大切である。先に述べたように、パフィオペディルムを栽培することは、決して易しいことではない。しかし、少なくとも枯らさないようにすること、病気や害虫等への対策が十分にできることなど、心がけなければならないことはたくさんある。チョットした不注意や、ほんの僅かな不手際で、貴重な株をこの世の中から失ってしまうのは本当に惜しいことだ。従って、初心者には、品種より、先ず栽培が上手になることを切に望みたい。コンポストの選択や、温度や日当たりなどの栽培の条件等、一朝一夕では到底身にはつかないだろう。どんなに栽培上手な人の指南を受けても、役に立たないことが多い。それぞれの栽培の状況が異なるからである。ベテランになると、コンポストや栽培条件が変化しても、それに対応することができるだろう。しかし初心者には、どこを調製すればよいか解らない。変化させてよいところと、悪いところの区別がつかない。例えば、コンポストを変えると、栽培の方法は大きく変わることが予想される。しかし、どんなコンポストを用いても、栽培方法をそれに応じたものに変更すれば、うまく栽培できるはずである。言い方を変えれば、コンポストは何でもよいと言うような極端な話しになる。しかし、栽培する環境や、人の性格等に応じて、その人がうまく栽培できる状況は、自ずと限定されてくるだろう。すなわち、どうも水やりを忘れがちな人に、水を毎日やらなければならないような栽培はできないのである。そこで、自分の性格と栽培環境に適した、自分なりの栽培方法をできるだけ早く見つけだすことが必用なのである。栽培の基本的な方法はいろいろな手引き書を紐解くのもよいし、ベテランに聞くのもよいであろう。しかし、最終的に栽培の成功を左右するのはベテランの細かいテクニックでもなければ、魔法の薬でもない。みなさん、栽培者のその環境に応じた経験と感なのである。自分を信じて焦らずゆっくりと構え、パフィペディルムと会話するように栽培すること。また、失敗を恐れず、失敗を犯せばそれを肥やしにして、一日も早く上手な栽培ができるように心がけて欲しい。生育が悪いからと言って、肥料を色々と変えたり、多く与えたり、不可解な栄養剤を与えたりすることにより、問題をかえって複雑にする場合がある。多くの場合、基本的には水さえ与えていれば十分とは言えない(三要素の不足により)までも健全に育つはずである。肥料はさらに生育をよくするために与えるもので、決して不健全な状態の株を健全にすることはできない。ましてや、魔法まがいの薬剤を信じてはいけない。栽培する場所や品種、そして自分の性格などをわきまえ、自分にあった栽培方法を早く確立することが必用である。また、健全に育てるために、いろいろと工夫を凝らすことは必用である。今自分は何をしているのかという事をわきまえながら、栽培にあたっていただきたい。ここでは、基本的な栽培をするための方法を述べるので、参考にしていただきたい。また、初心者用の解説と一般用の解説を用意したので、適切な方を利用していただきたい。
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