2.パフィオペディルムの病虫害

 パフィオペディルムにかかわらず洋ランが病気になると、それがいったい何の病気なのかをやたらに詳しく調べようとする方が多いようです。ところが実際には、同じ病原体に感染しても、洋ランの種類や生育の状態、感染した場所、季節、栽培温度などの環境、感染してからの経過時間などによりその病徴は大きく異なることが多く、その原因を明確にすることは容易ではありません。また、たとえその病原体が明らかになっても、処置を取る方法、あるいは治療・予防薬の種類は限られているので、病原体を明らかにすることが必ずしも早い治療につながるとは言えません

 ここで、処置(に用いる薬剤)を考慮した場合、病気の種類を大きく二つに分けることができます。別の言い方をすれば、パフィオペディルムに病気を引き起こす病原体が大きく二つの群に分けられることです。即ち、軟腐病の原因となるバクテリア(細菌)が感染した場合と、その他のほとんどの病気の原因となるファンギ(カビ類、菌類)が感染した場合を考えればよいのです。ウイルスによることもありますが、滅多に見られないうえに治療のしようがなく、注意(ウイルスの項参照)さえしておけば伝染することもないでしょう。さて、前者二つの病原体について考えると、バクテリアによる病気はほんの僅かに限られているので、これさえ押さえておけば後の病気は殆ど菌(カビ)類によるものになる訳です。いかにも簡単でしょう。従って、この事さえ解っておけば、治療法も原則的には単純で明快なものとなるはずです。もちろん、一つ一つの病原体に対して特に効果のある薬品がある場合があることもありますが、多くの場合は共通する薬品で予防・治癒共に効果は十分に期待されます。

 本来、病気にかからないように予防策を述べるのが先でしょうが、薬品を話題にするには病気の詳細を先に述べた方が得策と考え、まず病症の種類と原因となる病原体、次いで各々の病症についての治療法、そして最後に予防策を述べることにします。

(1)パフィオペディラムの主な病症

 パフィオペディルムが感染する主な病症には次のようなものがあります。()内は各々の病気をひきおこす病原体を示していますが、一つ一つ覚える必要はありません。

感染の原因

      病名 および 原因となる微生物

バクテリア

(細菌)

軟腐病

    ブラウン・ロット(Erwinia Cypripedii)

    ソフト・ロット (Erwinia carotovara)

ファンギ

(カビ)

軟腐病(いわゆる)

    褐色斑点病 (Pseudomonas Cypripedii ?)

葉先枯れ病 (Glomerella Cincta)

立枯れ病 (Fusarium Oxysporum)

根腐病 (Rhizokutonia Solani)

ブラック・ロット ( Pythium ultimum and                  Phytophthora cactorum)

リーフ・スポット(Phyllostictina pyryfor-mis のほ                  か、多種のカビ類)

灰色カビ病(ボトリチス病、Botrytis Cinerea)

ウイルス

ウイルスによる病症

バクテリアによる病症につづく(ここをクリック)

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