いわゆる軟腐病と呼ばれる病気は、多くの人に誤解されているので注意を必要とします。すなわち、葉が茶褐色になって腐ったようにみえるような病徴を示す病気を、ちまたでは総て軟腐病と呼んでいるからです。実際には、原因となる病原体の違いによって、大きく二つに分けられます。まず、細菌の一種、エルウィニア・シプリペディやエルウィニア・カロトバラによってひきおこされる本当の軟腐病(ブラウン・ロット)です。そして、次に比較的類似した病徴を示す褐色斑点病で、これは菌(カビ)に起因するものです。これらを的確に区別しなければ、治療の方法を大きく誤ることになります。ここではバクテリアに起因する本当の軟腐病について述べます。
軟腐病(ブラウン・ロット)は、病原体のバクテリアが傷口や害虫の口傷から侵入して感染することがほとんどですが、ときには気孔から侵入することもあるといわれています。
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エルウィニア・シプリペディ による軟腐病 |
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軟腐病(短期間で死滅する) |
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初期症状として小さな褐色の斑点があらわれます。このとき気が付いて適切な対応をしておけば大事にはいたらなくてすみます(治療実際例参照)。しばらく斑点の状態が続いたのち、斑点が大きくなり始めるとともに、半透明の液がにじんでいるような症状となり、患部はやや薄い灰色味を帯びた褐色になって、その形も円形から崩れはじめてきます。一旦このような状態になると、患部は驚くほど早く進行します。進行の早さは温度や水やりの状態によって異なりますが、早いと一晩で株の中心部にいたり、そのまわりの葉にも進行することがあります。ついには株全体が腐って溶けたような状態になり、独特の悪臭を放ちます。
<治療> この病気(本物の軟腐病)に感染したら大変です。株の中心部が侵食されれば、復帰は期待できないので諦めるしかありません。他の株への感染を避けるため、焼却処分にするか地中に埋めるのがよいでしょう。初期の場合には、適切な処置をすれば株を救うことが出来ます。早い発見と、迅速な処置を必要とする典型的な例と言えるでしょう。
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