内容
第一部:グランデュリフェラムの仲間たち。その原産地と変種について。
講演 田中 利典
我々古くからのパフィオファンにとって、グランデュリフェラムという種名よりプレスタンスの方がなじみが深い。グランデュリフェラムの仲間(プレスタンス、キンバリアナム、ウィリヘルミニエ、ボデゴミー、ガーディネリ)はRHSでは、すべてグランデュリフェラムのシノニム(同種異名)として扱われているものの、我々趣味家には、その歴史と細かい点での違いにより、これらの種を別種として扱う方が受け入れ安と考えられる。 ここでは、グランデュリフェラムとその仲間に属する各原種の発見の歴史とその分布、また、それぞれの種の違いを議論した。グランデュリフェラムの仲間は、スタミノードや株柄の違いや、その分布域の違いから、少なくとも大きく二つのグループに分けることができる。すなわち、グランデュリフェラム、プレスタンス、キバリアナムのグループと、ウィリヘルミニエ、ボデゴミー、ガーディネリのグループにである。また、例外を除いて、それぞれの種は、それぞれの特徴に基づき区別することができる。
第二部:グランデュリフェラムの仲間を用いた交配について
グランデュリフェラムを用いた交配は最近比較的見られるようになったが、他のポリアンサ(多花系)ほどには頻繁には見られない。花の形は、原則的に他のポリアンサ、例えばロスチャイルディアナムを用いた交配の結果に似るが、花の大きさや形はそれには及ばないことが殆どであろう。また、おなじグランデュリフェラムでも、先に述べた色々な変種(or別種)を用いると、その結果は大きく異なることが容易に想像できる。従って、グランデュリフェラムを用いた交配では、ロスチャイルディアナムの交配結果と比較して、優劣を問うことは望ましくない。また、交配は、グランデュリフェラム、特に、濃色の花を咲かせるウィリヘルミニエなどを用いることにより、この交配ならではの特徴を求めるような交配を行うのが好ましいと言えよう。
第三部:グランデュリフェラムの栽培について 参加者全員による討論
グランデュリフェラムの栽培について、参加者による経験や情報が紹介され、極めて活発な意見が交換された。分布域の違いから、栽培はグランデュリフェラムの仲間とウィリヘルミニエの仲間という、大きく二つの異なった扱いを行うのが原則となる。
1)コンポスト:ミックスコンポストが基本。ウィリヘルミニエは水が好きなことから水苔やスギ皮などでもよい結果を示すという。前者は許す限り、大きめの石材に植えるのが好ましい。
2)太陽光:グランデュリフェラムは自然では強い太陽光を浴びていると考えられるが、我々のような人工的な温室では自然を模倣するのは困難かつ危険であろう。健康な株に比較的光を強くすることは好ましいが、風通しを十分に考慮する必要がある。ウィリヘルミニエは比較的明るい光でよいが、グランデュリフェラムほどは強くする必要はない。いわゆる普通・・・というところとなる。
3)遮光: 前項と重複することになるが、ウィリヘルミニエは夏には50%遮光材を2枚、冬には同遮光材を1枚とする。一方、グランデュリフェラムにはグランデュリフェラムより更に遮光を少なくするが、どの程度少なくするかは栽培場所に強く依存する。すなわち、栽培場所の風通しが問題となる。基本的に太陽光は好むと考えられ、風通しを良くすることや値がよく働いていることなどを考慮して、できるだけ光を当てるようにするのがよいのでは・・・。
4)肥料:肥料はかなり好きなようで、十分に与えるのが良いであろうが、栽培が不十分な状態で与えると失敗の原因となろう。特にウィリヘルミニエには十分に与えることができる。一方、グランデュリフェラムはコンポストが比較的乾燥ぎみにすることがあるので、特に濃い肥料を与えるには注意を必要とする。生育期には薄目の液肥を灌水代わりに与えのがよいだろう。
5)水やり:グランデュリフェラムは海面からさほど離れていない崖のガレ場に生育しているので、春から夏の成長期にあたる雨期には十分な灌水を必要とし、乾季には灌水とやや乾燥の状況を作るのが理想といえよう。後者は比較的困難と思われるので、大きめのコンポストを用いて排水をよくし、乾燥気味の状況が作りやすようにする。ウィリヘルミニエは一年を通じて乾燥させない。春から夏の成長期はもちろんのこと、冬でもコンポストを決して乾かさないようにする。このような理由から、ウィリヘルミニエ用のコンポストを、水持ちがよいようにその組成を工夫することになる。
6)冬の温度:ウィリヘルミニエはニューギニアの山間部に分布し、夜間は気温が比較的低くなる。従って、熱帯地方に分布している原種といえども、特に栽培温度を考慮する必要はない。冬の最低温度は15度くらいでしょうか。一方、グランデュリフェラムは海面からさほど離れていない崖に生育しているので、一年を通じて高温多湿の状況にある。最低温度は、雨期の雨が続いた夜に記録される。従って、できるだけ高温栽培が好ましく、参加者の意見では、最低でも18度以上で栽培する方がほとんどであった。同じカテゴリーに入れられる原種であるが、栽培条件は大きく異なることに注意する必要がある。
とても、有意義なディスカッションでした。また、次回お会いしましょう!
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