パービセパルムの仲間とその栽培

パフィオペディルム属のパービセパルム ( Parvisepalum ) 亜属には、デレナティー(delenatii), アルメニアカム(armeniacum),ミクランサム(micranthum) , エマーソニー(emersonii), マリポエンセ(malipoense)のほか、最近新しく発見されたジャッキー(jackii) , ヒエピー(hiepii),ベトナメンセ(vietnamense), ハンギアナム(hangianum)などが含まれる。かつては、デレナティーのみが知られていただけで、デレナティーはベラチュラム(bellatulum)やニビウム(niveum)と同じブラキペタラム(Brachypetalum)の仲間に入れられていたが、同じ仲間としては異質な存在であった。しかし、アルメニアカムやミクランサムが中国で発見されると、デレナティはこれらの新しい品種と共に唐沢・斉藤博士らにより提唱されたパービセパルムという新たな亜属の一員としてまとめられた。この中国で発見されたパービセパルムの仲間は、いままで我々が馴染んできたパフィオペディルムの原種の中で、色彩・花形などで異彩を放つ実にユニークな品種が含まれている。この特徴は、近年盛んに行われてきたパービセパルムを用いた交配に偉観なく発揮され、現在の大きな交配ブームを巻き起こしている原因の一つになっている。ここでは、様々な新しく発見されたパービセパルムの仲間ばかりでなく、かつて交配に多用されたデレナティが再び交配という舞台に登場してきたのは言うまでもない。

お願い

ここでパービセパルムの原種を語るにあたり、私の浅はかな経験や知識を紹介さざるを得ないことを心からお詫び申し上げます。パービセパルムの栽培については確実な方法が未だ定まらず、様々な情報が飛び交っているのが現状です。これらについて、皆様は独自の経験や情報をお持ちだと思います。自分なりに巧くいった経験や、あるいは、失敗の経験など是非お寄せ下さい。このサイトで紹介しながら、少しでも順調に生育させられる環境や方法を手探りで見つけだしていきたいと思います。皆様のご協力をお待ちしております。

1) パービセパルム の分布と栽培

 パービセパルムはインドシナ半島の中東部(ベトナム)から北西部(中国雲南省)に、各種の分布は局地的ではあるが、全体的に広く分布している。これらの分布とそれぞれの気候を知ることは、これらの品種を栽培する上で極めて重要であることは言うまでもない。
 そこで、分布域の違いを便宜上大きく3つに分けることにしよう。
(1)アルメニアカムが分布する最北部(雲南省中北部)にあたる。
(2)ミクランサム、マリポエンセ、エマーソニーが分布する中部(中国南部、雲貴高原からベトナム北部)にあたる。
(3)デレナティーが分布するインドシナ半島の中東部(ベトナム)にあたる。

(1)最北部(雲南省中北部)・・・・・アルメニアカム

アルメニアカム

 雲南省の南部、北緯27度あたりにはベトナムに流れる大河メコン川上流のランカン川とヌーシャン(怒山)山脈を隔てたその西側にはサルウィーン川の流、ヌー(怒)江が平行して南北に流れている。標高は海抜600〜1000メートルくらいの亜熱帯の高地で、標高の低いところでは冬でもワイシャツで過ごせ、高いところはジャケットが必要なところである。ここはライムストーンが侵食された独特の地形を示し、アルメニアカムはビージャン(碧江)近郊のユンリン山脈のライムストーンの崖の岩のくぼみや割れ目に生育している。この地は、5月にはインド洋から高温多湿のモンスーンが川をさかのぼって来るため、曇天の日が続き、時には強い雨を降らせることがある。9月までは雨期となり、どしゃぶりの雨が降り続き、川は増水してこの当りに分散する村村は孤立した状態による。亜熱帯にしては高地であるため、夏は涼しい。夏の最高温度は28度、最低温度は13度くらい。冬は大陸からの乾燥した冷たいモンスーンが訪れる。晴天が続き、朝夕には霧が立ちこめる。アルメニアカムはほぼ北向きの冬のモンスーンが直接当たらないような半日陰の所を好む。潅木や岩の影となり、日中の直射光は当たらないが、ライムストーンの反射光はとても明るい。晴れた冬の低温が開花のホルモンを誘発すると考えられ、開花はふつう12月から2月の始めとる。サルウィーン川に沿って通常の産地から数100キロメートル離れたところに、赤色(アントシアン)系色素を欠く個体がコロニーを形成しているという。この群は変種として報告されているが、一般趣味家のなかではアルバムと称されているが、フラバム(flavum)とした方がよいであろう。
カンタン栽培メモ
 アルメニアカムはもともと過酷な環境で生育しているが、温室のようなより適
切な環境で栽培すると生育はよいようだ。しかし、開花には、本来の環境に近
い条件にする必要がある。生育には冬の最低温度を10~13 度くらいがよい。遮光は1年を通じて50%くらい。多肥を好まないので、3月から7月の生育期にのみ、少な目の固形肥料、あるいは、規定のさらに2〜5倍(4000〜10000倍)に希釈した液肥を与えるとよい。コンポストはクリプトモスかバークの単用でもよいが、ミックスコンポストが好ましい。水苔とは相性が悪い。生育がよいと、1本の親株から地下茎を伸ばして数本の小苗を発育させる。小苗は最低でも1本の根が出るまでそのまま1年くらい放置するのがよい。開花には、晩秋から冬を経て、少なくとも15度以下の低温が必要である。できれば10度前後まで下げたい。また、この時期には、低温ばかりでなく、日光が必要とされる。晴天の日には十分に日光浴をさせるように心がける。また、極めて水を好むと思われる。自然の環境下とは必ずしも一致しないかもしれないが、特に冬期には決して水を切らさないようにすると良い。私は、腰水とは言わないまでも鉢を受けた皿に水を張ることにより、決してコンポストを乾かさないようにしている。

アルメニアカム・アルバムのクリプトモス植え

私は、アルメニアカムはクリプトモスで植えるのを基本にしている。冬は鉢下の皿に水を入れてコンポストを常にしぇつている状態にすることにより、生育をよくすることが出来るようになった。

アルメニアカムのミックスコンポスト植え

ミックスコンポストに植えたとき、もちろん生育は悪くはないが、私にとつて水やりの難しさを痛感した。水が粋なことを解ったのだが、ついやりすぎようになってしまう。

パービセパルムの仲間とその栽培(その2)へつづく

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