報告! 第二回パフィオペディルム・サロン

 記録的な猛暑のなかにもかかわらず、前回を上回るたくさんの方々にお集まりいただけ、有意義でかつ濃厚な、パフィオ三昧の一日を送ることができました。みなさま、本当にご苦労様でした。私自身、パフィオキチガイを自称していますが、こんなにたくさんのパフィオキチガイがおられるとは思いませんでした。でも、パフィオの好きなものばかりが集まって話を始めると・・・・止めどもありません。朝の10時から、約一時間弱の昼食休憩時間を挟んだだけで、午後の5時近くまで、全く休憩無しの強行軍でした。また、次回もパフィオキチガイにお集まりいただけますよう、よろしくお願い申しあげます。
期日: 7月23日(日) 午前10時〜午後5時
場所:栃木県宇都宮市ろまんちっく村 (東北自動車道宇都宮インターから5分)(地図)
   体験センター展示棟。
参加人数:33名 (参加業者:小澤ラン園、新里蘭園、ミルキーウェィ)
参加費 2500円 (すべて飲食代です!)

内容

第一部:関西におけるパフィオ・ブラキペタラムの人気 
    講演 別所 和敏 (関西パフィオギルド)  


 関西パフィオペディルム・ギルドを代表する、関西におけるパフィオペディルムの人気はブラキペタラムの原種や、それに関わる交配が主流といえる。原種では関西パフィオペディルム・ギルドの副会長である岩崎氏のリューコキラムの優良個体を用いた自家交配についての結果や経験論が紹介された。

 彼はleucochilum ' Cape Rock ' と leucochilum ' Red Rock ' のシブリング・クロスを行ってNS 9 cm を越える素晴らしい優良個体を続出させることにより、関西はおろか日本中のブラキファンの間にその名を轟かせている。その交配の結果がスライドで紹介され、まさにleucochilumのトップクラスの花を作出するにあたり、ただ素晴らしい親を用いた交配を行うばかりでなく、フラスコの苗出しを含めた苗の育成にも、氏の卓越した気遣いとテクニックが紹介された。氏はフラスコ出しから開花までにわずか2年で育てるという驚異的な育成の名人でもあります。彼によると、 luecochilum に限っていえば、冬の最低温度を20℃以上という高温で栽培し、決して生育を休止させないのがコツとのことでした。

第二部:ベラチュラムの原産地と変種について  講演 田中 利典
 
ベラチュラムはタイの北部からミャンマー、ラオス、及び、中国の国境を跨ぐようにして連なる石灰岩室の山岳地帯に広く分布している。かつて我々の手元に入ってきていたベラチュラムはミャンマーとタイ産のもので、三種類の亜種が報告されている。
ラオスや中国におけるベラチュラムに関する正確な報告はないが、我々の知るベラチュラムとは雰囲気の異なる中国産のベラチュラムがあるという情報がある。事の真偽は確かではない。その他、ベラチュラムの色彩による変異種、アルバム、ロゼア、濃色の個体などの紹介、および、優良なベラチュラムの条件などが解説された。

中国のベラチュラム(写真は台湾から提供)

第三部:ベラチュラムの交配について  講演 田中 利典
 ベラチュラムの交配の結果が交配相手を亜属ごとに分けて紹介され、ベラチュラムという原種が他の品種と交配されたとき、その交配に及ぼす特徴が紹介された。このような考察は、自分で交配を行うときや、交配苗を入手するときに有効な情報となろう。

第四部:ベラチュラムの栽培について  参加者全員による討論
 ベラチュラムの栽培について、参加者による経験や情報が紹介され、極めて活発な意見が交換された。
1)コンポスト:ミックスコンポストが基本。石材には日向石、焼赤玉土が主流。その他、セラミックスの応用や御影石の利用なども紹介された。また、良く議論される石灰岩の使用については熱心な討論が繰り広げられた。石灰岩の使用にはほとんど効果が認められないとの意見が強かったが、生石灰をペースト状に溶いてコンポストに乗せると明確な効果が認められたという生々しい報告が出された。効果があるかどうかは正確には不明だが、使っても毒にはならないことは確かなようだ。カルシウムの補強剤として、石灰岩の他に寒水石、サンゴ、蛎殻を水でさらしたもの、骨粉に含まれる大型骨、鶏の手羽先骨(食した残り)を水でさらしたものなど・・・さまざま。健康食品で販売されている瓶入りのカルシウム粒材なども・・・。吸着剤にはチャコールや炭が用いられることが多く、一部では良質のセラミックスが用いられているという。
2)太陽光:分布は石灰岩の岩盤上で、山の北あるいは北東斜面に生育している。これらの分布域は北回帰線の南にあり、 ほとんど一年中、日の出と日の入りは太陽光を直接受ける。夏には北斜面でも真昼の太陽光の直射を受ける。しかし自然では、朝日は直接受けるが、昼間の太陽光は直接受けないような灌木による遮光がある。結果として、太陽光を長時間要求することは必ずしも必要ではないと考えられる。我々が栽培するには、朝日を受けるような場所が無難なところといえよう。でも、西日しか入らない温室でも栽培はできるということなので、強くこだわる必要はない。
3)遮光:夏は50%遮光材を2枚、冬には同遮光材を1枚とする。基本的に太陽光は好むと考えられ、風通しを良くすることや値がよく働いていることなどを考慮して、できるだけ光を当てるようにするのがよいのでは・・・。
4)肥料:肥料はかなり好きなようで、十分に与えるのが良いであろうが、栽培が不十分な状態で与えると失敗の原因となろう。薄目の液肥を灌水代わりに与えたり、固形肥料を用いる。冬前には開花を促す材料として、バッドグアノやリン酸肥料を集中して与えている報告もあった。
5)水やり:春から夏の成長期は十分にやると良いが、夏は株の上からザブザブと与える人が多い。問題は、ブラキペラム一般にわたり腐り病への恐怖から水を十分に与えられないことである。殺虫剤を含んだ消毒を十分した状態では、安心して水を与えてよいであろう。どのような方法をとるかは別にしても、十分に水を与えるようにする。冬でもできるだけ与えたいが、方法として難しいところがある。そこで、冬には、鉢の下に皿をおき、その皿を水で満たす(腰水までは行かない)方法や、一鉢ごと鉢を水に浸して鉢底から水を与える方法なども紹介された。もちろん冬でも株の上から水を与えるとういう話もあり、この場合には株の中央に溜まった水を、一鉢ごとにテッシュペーパーで吸い取るという。冬には乾燥気味にするという意見もあるが、けっして乾燥させないように志すとの意見が大半を占めた。
6)冬の温度:冬の最低温度は15くらいでしょうか。現地では、夜には気温が10℃前後まで下がることがあるが、我々の栽培環境の同じ温度とは意味が大きく異なると考えられる。leucochilumと同じように、苗を成長させるには比較的高い温度で成長させ続けるのがよいかもしれないが、成熟株にはある程度の栽培の起伏を与えるのは好ましいであろう。起伏には乾燥や気温などが考えるが、解らないのが事実。
 とても、意味深い、有意義なディスカッションでした。こんなに有意義な時間が過ごせたのは久しぶり・・・と言うような印象を受けました。また、次回お会いしましょう!

第二回サロン(その2)へ続く

第一回サロンの報告へ続く

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