3)無菌播種

無菌操作は原則的にクリーンベンチあるいは無菌箱の中で行う。自家製の無菌箱でもかまわないが、使用前に薬剤で十分に消毒し、さらにガスバーナーあるいはアルコールランプを利用する。外部からゴム手袋を経由して操作ができるように工夫された無菌箱では、完全閉鎖型の箱として使用するので、バーナー等は不要である。この場合、必要な機材(種子や苗を含む)を箱に入れた後、クロロフォルム、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ピューラックスでも可)などを機材の底部まで十分に噴霧し、薬剤が静置するまでするまで密閉して10〜30分間待つ。このようにすると箱に固定されたゴム手袋を使用することにより、自在に無菌操作ができるが、機材の搬出搬入が制限される欠点がある。ここでは、最も一般的なクリーンベンチ、あるいは、ガスバーナーを用いた場合について詳細に述べる。バーナーだけを使用するときには、操作をできるだけバーナーに近く、かつ炎の側面あるいはやや下部で行う。

(A)未熟種子(未開裂種子)の播種

a;種子の滅菌

(1)子房を包んでいるホウを取り外し、
(2)花柄を適当な長さ(約3cm)に切る。
(3)バーナーの炎で子房に生えている細毛を焼きとる。
これは、細毛とともに細毛を覆っているワックスを排除するためで、後の滅菌操作をより確実にする。

(4)次に、75%エタノール液に約1分間浸す。
この操作も次の殺菌液になじみやすくするためで、滅菌そのものではない。エタノールによる滅菌は細菌類の多くは殺すが、カビ類や一部の細菌には効果がない。
(5)次亜塩素酸ナトリウム溶液等の滅菌液に約5分間浸す。
滅菌液の濃度と滅菌時間には相関関係があるが、初心者は高濃度のものを用いた方が安全。原液を用いても差し支えはない。この操作が終わると、後の操作は完全な無菌で行わなければならない。十分な注意を払うように心がける。
(6)アルミホイルに包み滅菌したろ紙を開く。
ホイルの外部は素手で触るが、決して内部のろ紙には触れてはならない。素手あるいはピンセットで花茎の先端を掴んで子房をろ紙の中に運び、アルミホイルの外側から子房をかるく揉むようにして付着していた滅菌液を拭う。

b;子房の切断

(7)ろ紙を開き、滅菌したピンセットで子房の基部をしっかりと押さえながら、滅菌したカッターナイフの刃で図のように子房を切断する。この時、ろ紙を切らないように注意すること。

 

c;播種につづく