遠赤外線の一般的利用

遠赤外線を用いると、食品を焼く、煮る、蒸す等何れをとってもよくできて、味がよいとされています。水に照射すると口当りがよく、体に吸収されやすいおいし い水となります。食品そのものに照射しても味がよくなり、生鮮食品の鮮度を保ちます。実際に、生鮮食品の輸送車や商店の保温ケース、パネルヒーターや食品熟成庫等、日頃我々が気が付かないところに広く利用されています。このような様な応用の中でも、植物の生育をよくする目的で開発されたものを一部紹介しま すと、
1)セラミックスを含んだ紙:この上で栽培すると生育がよい。特に、根の成長が促進される。  農業やゴルフ場の芝生の育成に利用。
2)セラミックスを含んだビニールシート:ビニール温室に利用。野菜や果物の育成に非常によ  い。メロンの栽培では高い評価を得ている。
3)セラミックス処理による水:次の章で詳しく紹介します。
4)セラミックスを利用した暖房器
 ここまで聞くと、遠赤外線って面白そう。スゴイ!!・・と思われるでしょうが、この遠赤外線にも紆余曲折があった、いや、あるのです。遠赤外線は経験・ 体験の科学だと言われます。すなわち、様々な分野で遠赤外線による効果は体験することができるのだけれども、科学的な説明や立証が伴わないことが多いのです。従って、一部の科学者や専門家の間では未だに否定的な見方がされています。でも、我々にはそんな専門的な証拠なんていらないですよね。たとえ立証されたって、考えるだけでも面倒くさい。そうだ、我々は体験と経験でものを言う一般消費者なんだ。信じる者こそ救われる。ランがよく育ってくれればそれでいい。 
そこで、4)で紹介した暖房器について以下お話したいと思います。実は、この暖房器は1990年の暮れに全蘭の例会で商品紹介がなされたものなのです。当時、皆さんの耳にも真新しい言葉’遠赤外線’はいかにも馴染みのないものだったらしく、商品の中では先端を切って発売されたこの暖房器は、我々の世界ではどうやら不発に終わったようです。
しかし、これを用いてすばらしい結果をだされている会員がおられます。毎回というわけではありませんが、例会に出席された時には大株作りのパフィオに立派な花を咲かせ、そればかりでなく株がいかにも生き生きとしていたのが印象的でした。その色つやの良さは長年洋ランを栽培している人ならただ事ではないと気付かれたはずです。それもそのはず、その秘伝は栽培のうまさに加味された遠赤外線の利用にあったと思われます。 田沢英之さんは神奈川県在住で洋ラン歴18年。蘭歴30年以上の方が肩を並べられる全蘭でも中堅のベテランです。ご職業は某ゴルフ場の芝生管理の責任者でおられ、いわば植物の栽培にかけてはプロフェッショナルなのです。芝生管理責任者なんてあまり耳にしないご職業なのですが、我々庶民がそう簡単にはお相手をしては頂けないほど偉い方だそうです。ゴルフの棒なんてただの一度もさわったことの無い庶民の代表である私には、実は全く理解できない社会でありまして、満員電車の中でやたらと邪魔になる大きなゴルフバッグの主を横目でにらみつけるのがせいぜいです。「ゴルフやるぐらい金持ちなら、電車なんかに乗るな・・。」と心の中で怒りを叩き付けながら。話がだいぶ横道にそれてしまいました。
 田沢さんは6坪の温室をお持ちになり、暖房には通常単相200V仕様の1K W温風型電熱器を2基使用されています。遠赤外線電熱器は同様に単相200V 仕様の1.8KW(0.9KW2本、切替可)で、使用時には上記温風機のうち 1基を遠赤外線用のもの(0.9KW1本)と切り替えるそうです。温室の温度 は最低温度を18゜Cに設定し、原種を主体に多種多様の洋ランを栽培されてい ます。例会にお持ちになるパフィオの栽培技術から判断して、パフィオを専門に 栽培しておられるものと思っていましたが、原種に非常に興味がお有りとかで、 東南アジアに珍しい原種を捜しによく渡航されていたそうです。彼の話によります と、「調子いいねぇー。特に根がよく伸びる。」 鉢植えの株についてはは判ら ないが、C. warkerana等の吊してある株については、その根の伸びの効果は抜 群だそうです。私は個人的にパフィオにしか興味がなかったもんで、「パフィオ では・・、どうです。田沢さんのお持ちになった株を見せて頂いて・・、かなり 具合いは良さそうだと思ったんですが・・・。」とお尋ねしますと。「うん。いいよ。なんせ・・・、株の調子は良いようだよ。根をいちいち調べてはいないけどネ。」「あの株の姿、葉の伸び具合い、葉の色つや・・、どれをとっても私の栽培技術ではとうてい及ばないなあ。」と、とても羨ましく思いながら「さすがプロにはかなわないワ。」なんて卑屈になったものです。この様な話を聞いて、私にはパフィオ栽培の神様に見えた田沢さんが身近な人に見えてきてとても嬉しくなりました。ヨォーシ、僕もやるゾー・・・! でも、田沢さんも言われておりましたが、比較対照を用いていないので具体的にどれぐらい効果があるかは解らないとのことです。ご職業柄、ゴルフ場の芝生の生育に遠赤外線を放射するセラミックスの粒子を撒いたりするとのことで、その効果は確実にあるようなのですが・・・。ただ一つ、注意しなければならないことがあるそうです。この暖房器を用いると温室内がやたらに乾燥するのだそうで、鉢にはともかく、棚下や通り道には毎日水を撒かなければなりません。また、この暖房器にはサーモスタット等の付帯設備が付いていないので使いづらく、もう少し商品としての開発が望まれるようです。さらに、商品として大量製品として製造していないからでしょうか、やや高価なのが我々にとって最もひっかかるところかも知れません。私はここで商品の宣伝をしているわけではありませんので、くれぐれも誤解のないようにお願い致します。また、残念な話しですが、これらを製造していた会社では、機械の製造を中止してしまいました。いまではこのような遠赤外線照射器を専門に製造販売している会社がありません。ご存じの方、あるいは、製造会社の方があればご一報下さい。尚、将来後で紹介する宇都宮のセラミックス専門会社に依頼すれば、製造していただけるかも知れません。

洋ラン栽培への利用につづく(ここをクリック)