4)肥料 |
肥料は株の生育期にのみ与えるのが原則である。普通、4月の下旬から梅雨明けまでであるが、温室で最低温度を15度以上に設定して栽培している場合には、2月の中旬から与えてもよい。真夏は、暑すぎて株の生育が停止することが多いので、肥料は与えないようにする。クーラーを使った栽培や、山上げなどの、夏でも生育が順調に期待できる場合にはその限りではない。パフィオペディルムの生育が停止した時(夏の暑さや冬の寒さなど)には肥料の成分がほとんどないことが理想であることから、梅雨が明けた後で施肥することは好ましくない。梅雨が明ける頃に肥料が切れるように与えることが好ましい。もう一つの成長期は秋である。太陽は低くなってきたが、昼間は残暑で暑い頃に与え始める。夜温は20度前後になる。そして、夜温が15〜18度くらいになってきた頃には、肥料を切りたい。この期間はそう長くはないので、初心者には難しく避けた方がよい。秋になったら、成長は大きく期待せずに、冬の間にゆっくりと株を休ませ、良い花を咲かせる準備に入った方が賢明であろう。肥料には、基本的に固形肥料と駅肥がある。固形肥料には有機肥料が多く、液肥には化学肥料が多い。前者の典型的なものは、油粕と骨粉を混合して発酵させたもので、園芸店で容易に入手できる。しかし、市販のものは骨粉が少なく、その代わりに鶏糞を多量に使用しているものが多い。結果として、窒素成分が過多になるが、栽培に大きな支障をきたすことはない。市販の油粕と骨粉(魚よりブタなどの動物がよい)を1:1〜0.5に混合し、水を加えて練り、団子あるいは板状に固めることにより、自分で作ることができる。しかし、発酵するときに激しい悪臭を放つので充分に覚悟する必用がある。発酵には2〜4週間かかるので、雨の当たらない屋外に放置する。混合したペーストをいきなり鉢にのせると、発酵により40度以上の熱を発生するので、根に障害を与えることになる。5寸鉢に、大人の親指の先の大きさくらいの塊を1ケ置くことを基準にして、それぞれの鉢のサイズに合わせてに適当量の固形肥料を与える。与えすぎは’根腐れ’の原因となったり、肥料の成分がコンポストに蓄積して塩障害を起こす原因となるので、くれぐれも与えすぎないように注意すること。初心者には最も多い失敗の一つである。このように、固形肥料をうまく与えることは、実はなかなか容易なことではない。最近、発酵させた有機液肥が市販されており、これを利用するのもよい。しかし、くれぐれも、希釈を間違えたり、濃いものを与えたりしないようにすることを忘れないようにする。 |
固形肥料を用いるにはある程度の慣れが必用であるが、液肥は希釈が自由で、その成分も選択できることから、固形肥料に比べるとずっと使用しやすい肥料である。初心者や自信のない人には、液肥の使用をお勧めする。液肥には、ハイポネックスなど、さまざまな液肥が開発・市販されており、入手も容易なので利用しやすい。最近では、マグネシウムなどの微量金属が含まれているものもあり、信頼度の高いものになってきたようだ。液肥の主成分は窒素、リン酸、カリの三要素が目的に応じた比率で含まれていることである。市販ボトルのラベルに必ず窒素:リン酸:カリの比率が表示されているので、購入するときには注意して確認しよう。3月から梅雨明けまでの生育期には窒素:リン酸:カリの比率が、(10:10:10)あるいは、窒素の比率が高いものを用いる。一方、窒素の比率が低くて、リン酸の比率が高いものがあるが、これは秋ぐちに与える株の充実と花を咲かせることを促す肥料である。用途に違いがあるので注意する必用がある。 これらの液肥は、1000倍くらいに希釈して用いるような指示があるので注意すること。また、ふつう、指示された規定希釈のさらに2〜3倍に希釈したものを、週1〜2回与えるのが安全である。固形肥料と同じように、与えすぎ、特に濃いものの与えすぎは禁物である。濃い肥料を時々与えるより、薄い肥料を頻繁に与える方が効果的である。その点から、規定希釈の5〜10倍くらいに希釈したものを、水やり事に与えてもよい。液肥は希釈を容易に変えられるので、便利である。冬の温室の最低温度を15〜18度にしている場合、苗などの若い株は、冬でも生育を続けていることが多い。このような株には、冬でも規定希釈よりさらに5〜10倍に希釈した液肥を与え続けてもよい。 |
5)病虫害対策 |
パフィオペディルムの病虫害対策については、AJOSのホームページに専門に扱ったページがあるので、それを参照して下さい。 |
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