2002.12.9

パフィオペディルムの腰水を利用した栽培について

小林 重信(JPA 会員)
千葉県東葛飾郡沼南町大津ヶ丘1丁目26−9
sp-j.ocd@guitar.ocn.ne.jp

1 目 的
  今夏、素焼き鉢の「気化熱」による鉢の温度変化が大きいと聞きこの温度差を有効活用してみようと腰水もどき栽培に挑戦し、夏季における評価をまとめてみました。

2 材 料
(1) 写真のように、プラ鉢に植えられた株をそのまま「素焼き鉢」に入れる。
(2) 素焼き鉢とプラ鉢のサイズと組み合わせは、同サイズの物の組み合わせが最適と思われます。プラ鉢と素焼き鉢の底の隙間は、3号鉢の組み合わせで約3〜4・でした。
(3) トレイは、ホームセンターで2~300円程度の物です。
(4) 水の深さは、1・位で様子を見ました。

1. 素焼き鉢   2. プラ鉢   3. 設定状態    4.受け皿

3 方 法
(1)  7.20 トレイに8種類の株と素焼き鉢を設定し、約1・の水をはった。一昼夜で鉢が水を吸ってトレイはからからになり、水を補充しました。
(2)  その後、水が完全になくなったら、補充してきました。

4 結 果
(1) 葉面との温度等を比較した結果、次のとおりでした。なお、データが少ないのは、記録しておいた分だけです。

葉面温度

素焼き鉢温度

プラ鉢温度

温室内湿度

備 考

36℃

30℃

32℃

55%

8月

30

26

27

70

9月初旬

20

20

20

90

9月下旬

27

24

24

65

9月下旬


(2) 8月初旬花が開き始めたため花の色を見ようと素焼き鉢から外したところ、下部に「根っこ」が出てきていた。そのとき、同じサイズで通常と素焼き鉢に分けて栽培していたGloria Naugleを比較したところ写真のように葉っぱの大きさに相違がでました。

1. 腰水栽培     2. 普通栽培
腰水を始める前の株の大きさは、普通栽培品の方が大きいくらいで、葉の枚数は同じです。

(3) 8月初旬「根」が出ていたのは2株でしたが、その後、他の4株にも鉢の外に根が出てきていた。

1. 新しい根(曲がって成長)     2. 先端が止まった根

(4) その後、「根」の先端が鉢に接触したらどうなるか監視していたところ最近になって「根が止まっている」ことを確認しました。ただし新しい根がすでに出かかっていた。最近、新しい根がプラ・ポットに添って出ており、最初の根で学習したのかなと・・・?
(5) 最近、急に気温が下がり始め、鉢内温度も下がっているのかなと思い計測したところ、すべてが前の表のとおり同温でした。

5 考 察
(1)この栽培法で真夏でも株は十分成長を続けている。プラ鉢と素焼き鉢の間の湿度は常に100%近くを保持しており、株にとっては理想的な状態であると思われる。
(2)この間の水やりは、酷暑時にも1回/週でした。

6 問題点
病気の感染の心配がないのか、気になるところであります。

7 今後の予定
(1) 今後も継続して栽培を続けてみます。来春にはその結果をレポートする予定です。
(2) トレイに入れる水を3通りで試しています。
水の種類は、RO水、活性剤入り水、肥料入り水です。
(是非セラミックスを使ってみてください。田中)

栽培風景で、新しく上記の3種類の水を用いて実験中です。

8 経過報告 その1 2002年11月20日

◎ 9月下旬 

 鉢の下部に出ていた根が鉢(素焼き鉢)に接触すると根が茶色に変色すると同時に成長が止まっていた。その後次の根が出てきていた。この根も同様に茶色に変色し鉢との接触で成長は、止まっていた。
気になりつつも放置して観察を続けた。

◎ 11月中旬

コンポストの盛り上がりを確認したため、根の状態を確認するため分解した。鉢から出た根は容易に外れた。

本株は、前回サロンで紹介したゴデフロイエ(アップル・レッド)です。この株のコンポストが鉢から盛り上がっていた。

 この株は、グロリア・ノーグルで左の2株は、同じサイズで購入
右の株は、トップ苗として購入した。
左の苗は、通常に栽培、しかし9月下旬から腰水もどきで栽培、株の付け根に新しい根が出てきている。
中の苗が、腰水もどきで7月から栽培している株。
右の苗は、通常に栽培、左と同様に9月から腰水もどきで栽培、新しい根が動きまわっている

植え替えた株です。
左がトップ苗、中が腰水もどき品、右は通常栽培品
なお、この鉢は、 パフィオペディルム研究会で作製したセラミックスを配合した鉢です。鉢についてはプラ鉢作ろう会を参照して下さい。

結 論

夏でも快調に成長をしつづけることが判明しました。今後、この冬から来春にかけてどのような状況になるか再びレポートしたいと考えております。


とても参考になるアイデアですね。是非皆さんも、このようなな栽培を試してみてください。
その結果の報告もお待ちしています。(田中)