オドントグロッサムの仲間は決して新しいものではありませんが、今までにあ
まり普及していなかったので、展示会などでは新鮮に見えるらしく関心が高まっ
ているようです。 オドントは美しく、魅力的ではありますが、暑さに弱く栽培
いくいということで、とかく敬遠 され勝ちなのは残念なことです。たしかに夏
季に連日30℃を超え、夜は熱帯夜が続くようなところでは、よほど工夫しない限
り良い出来を望むのはむずかしいかもしれません。特に花の見事なオドントグロ
ッサムの交配種やオドンティオダは、山上げや冷房をしないと、年々作落ちして
、やがては消えていく運命をたどりやすいものです。その点でオドントシディウ
ムやウィルソナラなどは、花の色が黄色や褐色に偏り、色彩の幅が狭いかもしれ
ませんが、耐暑性はかなりよく、工夫ひとつでうまくできるでしょう。
間題の夏越しですが、もし海抜1000メートルくらいの山地に、夏の間らんを預
かってくれるところがあれば、山上げに越したことはないでしょう。しかし安心
してオドントを預けられるところはめったにありません。次善の策は冷房温室で
す。冷房をするのは、設備費はかかりますがどこでもできることです。冷房温室
は以前は大仕事でしたが、 今ではエアコンは安くなりましたし、ウィンド型 な
らば素人細工でも取り付けることができるでしよう。ひとつ試みてはいかがでし
ょうか。冷房温室にしたときの温度の目安ですが、夏の夜温を20℃以下、できれ
ば18℃くらいにしたいものです。 昼間は27〜28℃以下が望ましいのですが。短
時間ならば30℃を超えてもそれほど心配はありません。夜の温度を重視してくだ
さい。
オドントというと先ず温度を考えますが、温度に劣らず大切なのが風と湿度で
す。日照によって上昇したオドントの体温を冷やすわけです。重要なのは気温で
はなく、らんの体温であることを忘れてはいけません。遮光を強くする手段も、
らんの体温を上げないために使われますが、遮光よりも空冷の効果を優先して考
えてください。またオドントは十分な湿度度好きですから、温室内が乾燥しない
ようにすることが大切です。
夏以外の季節は、一日の最低温度力江0〜12℃、最高は20〜22℃を目標に、な
るべくそれに近い温度で管理するのがよいと思います。
光線はカトレヤよりやや弱く、1万ルクス程度あるとよいでしょう。温度が高
いのに光線力薄氷・ ということがないように心がけます。
水やりはカトレヤのような乾湿の交替でなく、常に適湿を保持するようにしま
す。鉢内の水はけをよくした上で、コンポストが乾かないうちに次の水やりをす
るという要領です。新しいシュートの成育中は薄目の肥料をよく施すのがよいよ
うですが、バルブが太りだしたら施肥を加減して、バルブにひび割れがはいらな
いようにします。
植え方は海外ではプラ鉢にミックスコンポストが普通ですが、私は素焼き鉢に
水苔植えが無難と思います。成株の植え替えは1・5〜2年毎に晩秋か早春に、新
芽が5センチ位になったときや根が一斉に出たときをみて行うのがよいでしょう
。
オドントにはちょっと気むずかしいところもります。私がオドントを始めてか
ら約20年になりますが、いまだにどの株も毎年順調に育て咲か せるということ
ができずにいます。年毎に衰えたり、順調不調を繰り返して育たないといった株
が少なからずあります。これは私の栽培の至らないためと思いますが、一方で毎
年順調に花を咲かせる株もあるのですから、あながち私のせいばかりではないか
も知れません。
オドントを始めてはみたがうまくいかないということがありましたら、頭から
駄目と決めつけずに、気むずかし屋には消えてもらって、丈夫な株だけ残してか
わいがるようにしていかれるのが、オドントに親しむ最善の方法だと思います。