その7
平成16年12月
本橋由次 Yuuji Motohashi
根無しバンダの再生法
(問)
 大切にしていたバンダですが、根腐れで根が一本も無くなってしまいました。どうすれば元のように元気になるでしょうか?

(答)
 そうですか、バンダの根を全部ダメにしてしまいましたか!
正直言うと、回復させるのは無理だと思います。つまり、根が沢山あった良い状態の株を栽培していて、根を全部ダメにしてしまったのですから、根の無い最悪の株を栽培して発根させるのはとても無理だと思います。
ですが今回は中級者以上向けに、私が3年ほど前に友人から頼まれて、片葉8枚づつの中株を再生したやり方を披露させて頂くこととします。
(栽培にとても気を使いましたので、もう二度とやりたくはありませんが・・・)

 まずバンダは、皆さんもご存知の通り、カトレヤと同じCAM植物です。
CAM植物は、夜間、葉の裏側の気孔を開放して植物体内に二酸化炭素を取り入れ、一度リンゴ酸などに変換させて、昼間また元に戻して光により水と反応させて糖を合成しています。

根の無くなってしまったバンダは、水分を主に吸収する根が無い訳ですから、光合成に必要な水分は、葉の裏側の気孔からだけしか吸収する事が出来ません。
したがって、水分の吸収量は、根の健全なバンダと比べると、あまりにも少ししか吸収できない事が、誰にも分かるものと思われます。
つまり、光合成に必要な水分があまり吸収出来ない植物体な訳ですから、必然的に光合成の量も少なくしか生成出来ないため、光の量(一日に当てる時間)も多く(長く)は必要としないはずです。また、光の強さも(光合成速度が低下するため)健全な株よりも弱くするべきだと思われます。

また、一般植物の挿し木をする時には、葉の裏からの水分の蒸散を抑えるために地上部分を剪定しますが、CAM植物の場合には、私は葉を剪定はせずにそのままの状態で栽培し、葉の脱水状況を観察しながら光の量(長さ)と風力を調整しています。
つまり、この株の場合は、遮光を一般のバンダよりもやや強い所(約65%遮光)に置き、バンダの一番好む通風を(ファンで)良くし、夕方サッと水をかけ夜間の湿度を90%以上に保ち2〜3週間様子をみます。
バンダの場合、根が無いと始めは下葉を何枚か落とす事がありますが、環境が合ってくれば下葉の落下は、数枚落としたところで止まります。(半分落ちても大丈夫です)

始めは下葉を毎日触り、極端に脱水状態になっていないかを確認します。極端な脱水状態になっていた場合には、遮光を強く(例えば65%→75%)するか、風通しの速度を遅く(ファンを遠ざける)するかして調整していきます。肥料をやる場合は、5000倍程度の薄いものを夕方水遣りの時に一緒にやる程度にして、置肥は与えません。このような感じで1ヶ月も管理していくと株も落ち着きだし、下葉を落とす事を止め葉も硬い状態に保てます。

なお、根の無い状態の株は、(言い方を変えると)株にとっては乾燥を意味する事になりますので、花芽を着けてしまう事があります。これをそのまま咲かせてしまいますと、文字道り「死に花」となって、株は一巻の終わりとなってしまいますので、花芽を発見した時には早めにかきとる様にして下さい。根が無い株の花は、咲かせても満足な花には咲きませんので。

6月頃の、バンダにとって一番良い気候に向かう時期にこの方法でやると、かなりの確率で再生が可能と思われますが、秋口からこの方法をやりますと、多くの場合は失敗に終わるものと思われます。何故かともうしますと、冬の間は、低温によりCAM自体が不活性となるために、根が出ずらく消耗するだけの期間となってしまう事が多いからです。勿論、バンダの好む25〜35℃をずっと保っていられれば生育は可能ですが、冬季に夜間25℃以上を保つのは、一般的ではありませんからね。