3.成熟期間

交配後、成熟するに伴い子房は堅く太く生長する。成熟期間は未熟(未開裂)種子を播きたい時には、交配後6〜8ケ月後がよい。この頃になると子房(種子の入っている莢)の色彩があせてくる。さらに成熟が進む(10ケ月前後)と、子房の先端から褐色に変化し始め、ついには開裂して種子を周辺にまき散らす。このような場合には、完熟(開裂)種子そのものを滅菌した後に播くという方法をとらねばならない。播種作業の煩雑さを考慮すると、初心者には未熟種子の播種をお勧めする。この成熟期間は、株の置かれている環境に大きく依存する。多くの場合、種子の成熟中に株は暑い夏を経過するであろう。不適切な暑さのもとでは、種子は十分に成熟できないまま莢は開裂に向かっていくようだ。夏を涼しく経過させると、子房は1年を経過しても褐色に変化しないこともある。このような状態では、多くの種子が成熟しているに違いない。

 

4.無菌播種

1)準備するもの

培地関係
フラスコ(300〜500ml)、ゴム栓(中央に直径3〜5mmの孔を開け、脱脂綿をやや固めに詰めたもの)。

培  地
表−(a),(b),(c)

播種関係
アルミホイル、ろ紙、カッターナイフの刃、ピンセット、金属製スパーテル(耳かき)、白金耳、蒸留水、ピペット(1〜5ml)、ゴム球。

滅菌関係
ビーカー(100〜250ml)、塩素溶液(次亜塩素酸ナトリウム溶液;有効塩素5%以上、ピューラックスやさらし粉でもよい)、75%エタノール(エチルアルコール)。その他:オートクレーブ(高圧滅菌器、圧力鍋でもよい)、クリーンベンチ(無菌箱)。
注意;アルミホイル、ろ紙、カッターナイフの刃、ピンセット、金属製スパーテル(耳かき)、白金耳はそれぞれアルミホイルで包み、オートクレーブにかけて滅菌する。滅菌水は蒸留水をフラスコにとり、栓をして滅菌する(完全にフタをしないように。滅菌するときにフタをすると、蒸気圧でフタが飛んだり、ガラスが割れたりする)。

播種培地(a)

播種培地(b)

栄養培地(c)
ハイポネックス(N:P:K=6:6:15)    2.5g    2.5g    2.5g
ショ糖    10g    20g    20g
蜂蜜    15g    ---    ---
バナナ搾り汁    ---    ---    30g
寒天    8~10g    8~10g    8~10g
蒸留水(pH5.5~6.0)    1 L    1 L    1 L

2)培地の準備

約800mlの蒸留水にハイポネックス、ショ糖、蜂蜜、(バナナの搾り汁)(上表)を溶かし、pHメーターあるいはpH試験紙を用いてpHを測定する。pHが低すぎる場合には水酸化ナトリウム(苛性ソーダー)、あるいは水酸化カリウム(苛性カリ)を、また、高すぎる場合には塩酸を滴下してpHが5.5〜6.0におさまるように調製する。井戸水を利用する場合にはpH調製が不要であることがあるが、水道水や蒸留水を用いる場合には必ず行うことになろう。使用する水のpHを予め測定しておくとよい。次に規定量の寒天を加える。加える寒天の量は、使用する寒天の質によって異なるが、初心者には寒天が崩れない程度の柔らかめがよい。次に蒸留水を加えて全量を1リットルにする。
溶液は湯煎にいれ、撹拌しながら寒天を完全に溶かす(溶液が透明になるまで)。溶けた培地をフラスコに分注し、ゴム栓でフタをする。フラスコに入れる培地の量は、培地の深さが1.5〜2cmになるくらいがよい。終了すると、フラスコをオートクレーブ(家庭用圧力鍋でもよい)で、120℃、10〜20分の滅菌を行う。滅菌後、寒天が固まらないうちにフラスコを水平な場所に移し、固まるまで静置する。フラスコは寒天が固まるまで絶対に動かしてはならない。

3)無菌播種につづく