3) 水やり

 ’どれくらいの頻度で、水やりをするのですか’と、よく聞かれることがあり、その度毎に返事に窮する。水やりは、決して人に聞いた通りにできるものではない。原則的に、パフィオペディルムの鉢は決して乾かさないようにする。生育期と夏には多めに水を与え、冬の休眠期には少なめ(夜や湿っている程度)にする。さて、話しは元に戻って、どのくらいの頻度で水やりをするか、である。すでにお気づきのことと思うが、上記の状態を保つように水やりをすることになる。これは、鉢の大きさの違い、コンポストの違い、同じコンポストでもコンポストのサイズの違い、温室内で鉢が置かれている場所(日当たりや風通し)の違い、また、株の状態の違いにより異なるのが結論である。コンポストのサイズが小さければ水は乾きにくいし、日当たりや風通しがよければ乾きは早い。また、株が元気で根から水を盛んに吸収している場合には、当然乾きは早い。このような原因で、それぞれ各人の温室により状況は異なり、さらに厳密に言えば、、同じ温室の中でも鉢毎に違うことになる。従って、水やりは、鉢毎に変えることが理想と言うことになろう。しかし、現実には不可能であることは言うまでもない。平均的な水やりで済ませることが普通である。あえて言うとなれば、全くの平均的な結果ではあるが、夏には2〜3日に一度、冬には一週間に一度くらいの頻度になろうか。実際には、このような平均的な水やりを行い、乾燥の激しい鉢には特別に多めに、あるいは、頻度を高く与えるとか、乾きの悪い鉢には水やりを控えるなどの注意を加える他はない。特に、根に支障があるような株には、水を控えめにして発根を促すことから、注意が必要である。

 水は、基本的にホースで株の上からザブザブとやってもかまわない。しかし、株の中央に水がたまると、花が飛んでしまうとか病気になると言われることがよくある。これは事実である。しかし、病気の原因は、水ではない。株の中央部にダニやカイガラムシが繁殖し株に傷を付けていることから、水をかけることにより病原体が感染しやすくしてしまったと考えられる。病虫害に対する予防を確実にしていると、水やりも楽になる。株の上から水やりができない場合には、一鉢毎にコンポストに水を与える。この方法もとりにくいときには、鉢を発泡スチロールなどの箱に入れ、腰水にしてコンポストを濡らす。ただしこの時には、コンポストが濡れたら鉢を発泡スチロールから出してやろう。よほどのベテランでないと、腰水のやりすぎはよくない。特に、CPにした小苗や、腐敗病にいつも悩まされるブラキペタラムの仲間には、このような水やりの方法をお勧めする。

 先に、コンポストの違いにより乾燥の早さが異なると言ったが、これを利用して、栽培者の性格に合わせてコンポストを選ぶことをお勧めする。ついつい水やりを多くしてしまう人は、杉皮などの乾燥しやすいコンポストを用いたり、ミックスコンポストだと粒の大きなコンポストにして乾燥しやすくするとよい。一方、忙しくて、ついつい水やりが遅れるような一には、ミックスコンポストに木質材を多めに混合したり、粒を小さくするなどの工夫を加えるとよい。ただ、鉢の乾燥を待って水やりする方法もよいが、栽培者にあわせて、乾燥する早さもある程度は調節できることを忘れないで欲しい。

4)肥料につづく(ここをクリック)

目次に戻る