ムシ・魚・鳥・花・・・
ありとあらゆる生きものに夢中になっていた子どものころ、
夢と想像が・・・無限に広がる世界があった。
図鑑や少年雑誌でしか見られない
宝ものをはるかに凌ぐ・・・未知なる驚異の世界。
それは、熱帯のジャングルに棲む
大きくて力強い、色鮮やかな生きものたち。
なかでも、夢のなかの夢、
憧れの・・・ヘラクレスオオカブトムシ。
ときおりデパートで開催される世界昆虫展では、
動かない標本の前で釘付けになっていた。
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そのヘラクレスオオカブトムシが・・・
今、この手のひらで、
威厳に満ちた、真っ黒な瞳で僕をにらみつけている。
動く・・・ほんとうに動いてる・・・
グッ、グッ、グッ・・・ゆっくりと、そして力強く。
友人からもらった幼虫を育て始めてからおよそ一年半、
この夏、ようやく誕生した。
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いいね、いいね・・・カッコいいね!
毎晩、毎晩、手のひらに載せて陶酔する私に、
はじめはもの珍しさからか、
その大きさと迫力に仰天・感心していた家族も、
いつのまにか・・・呆れ顔。
「よくも飽きないわね?」
毎夜、毎夜、繰り返される家内の挑戦的な詰問にも馬耳東風。
「大きな声で鳴かないだけましだけど・・・」
「コバエを出さないようにしてください!」
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この、動くプラモデルのような・・・おもちゃ?
幼いころからの憧れと思い入れが蓄積・凝集された
僕の歴史の代弁者。
その感動は決して色あせない・・・むかしむかしの、幼いころのママ。
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人の思考や行動の原点って、幼いころにあるのかな?
小学生ころから、
訳もわからず虜になったシュンラン。
高校生のとき、
夕立の雨宿りをした花屋さんで、
パフィオペディルムとの衝撃的な、運命的な出会い。
この初対面の感動と思い入れは、
瞬間に・・・本能的に・・・
私の歴史のなかに、強烈にインプットされた特別な存在だったに違いない。
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時を経て今、
その思い出に似た感動を、
ゆっくりと、じっくり味わっている自らを意識する。
子どものころを思い起こしながら至福のひと時を過ごすことは、
自らの歴史を証明し、肯定すること。
母親の胎内に回帰したような、
安心と温かい安らぎに似た幸せを味わえるひと時。
・・・しかもその感動が、
決して癒しにとどまることがなく、
さらに創造と充実の世界へ昇華できれば
こんなにすばらしいことはないだろう。
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残暑にむせる温室で、
子どものころの感動に浸りながら、
絶えず温かい微笑みを投げかけてくれるマドンナたちに
心から感謝!
高校生のときの衝撃的な出会いから、
苦悩しながらも決してひるまず、諦めず、
夢に満ちた創造の世界へいざなってくれる温室いっぱいのマドンナたちに
心から乾杯!
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