NEWS NO.7

Phragmipaphium のその後 (1つの結果として)
 現存するPhragmipaphiumの真偽について、議論されることがよくあります。それの主張は、それぞれの立場で十分に理解できるのですが、そのいずれかを立証する科学的な根拠がなかったのは事実です。今までに、Phragmipaphiumと称するいくつもの株(交配)が登場しましたが、それぞれの結果は必ずしも同じではないと思われます。その解決は、将来、的確な判断ができる方法が開発されるまで待たざるをえないのが現状でした。この度、方法論としては決して新しくはないのですが、交配株の染色体を観察し、その交配の真偽について、判断を下す材料が出されましたので紹介いたします。そのなかでも述べられておりますが、全てが解決したわけではありません。母細胞の起源、あるいは、染色体の一部に相手の遺伝子が組み込まれているなどの可能性もあります。しかし、ここで調べられた株については、かなり真実に迫っているものともとることができます。先に申し上げましたように、この結果が、今まで報告されたPhragmipaphiumの全てについて言及される訳ではありません。交配を試みた結果の一つから、このような結論(に近い?)が導き出されたと認識いただければよいと思います。(田中 利典)

フラグミとパフィオの属間雑種の調査結果
青山 幹男
蘭ミュージアム・高森(高森町蘭植物園)
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要点

(1) Phragmipaphium ( Phrag. besseae x Paph. micranthum)
 Phragmipaphium ( Phrag. besseae x Paph. micranthum) と思われる株の根から、細胞の染色体を解析した。根は状態がとても良く、染色体も良い状況で観察できた。その結果、染色体数は30本で、全てPaphに由来すると判別できる大きさのものであった。花の特徴から推察される(Cochlopetalum x Brachypetalum)のF1雑種の染色体組み合わせと一致します。1本観察されたサテライト染色体の形態から考えられる組み合わせは、chamberainianum(2n=34 ) x niveum(2
n=26)、あるいは chamberainianum(2n=34) x godefroyae(2n=26)と思われる。

Phragmipaphium ( Phrag. besseae x Paph. micranthum)

(2) Phragmipaphium (Phrag. besseae x Paph. malipoense)
 Phragmipaphium (Phrag. besseae x Paph. malipoense)は根の状態が悪く分裂細胞もほとんど見つからなかった。正確な染色体数は判定できなかったが、約40近い染色体が観察された。染色体の大きさから、Phragがかかっている可能性は少なく、Paphの雑種と思われる。I 型染色体が多く含まれて
いるので、chamberainianum(2n=34)と(2n=40)のwentoworthianumや bougainvilleanumが組み合わさった雑種の可能性が考えられ る。

Phragmipaphium (Phrag. besseae x Paph. malipoense)

(3) 考察
これらの交配は、Phragmipediumを母親に用いているので、Paphの染色体がPhragの染色体を駆逐したことも可能性として残る。これを明らかにするには、葉緑体DNAの塩基配列を調べ、その配列がPhragmipediumに由来していること証明する必要がある。しかし、今回開花した交配は、現実的には播種したラボでのフラスコの取り違いの可能性が高いと思われる。他にも生育中の苗があるようなので、今後の調査に期待したい。 

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