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パフィオの分類技術に新しい局面が登場か? 生物の分類にDNAの解析が用いられるようになって久しいが、最近になってようやくランの分類にもDNA解析が応用され始めてきた。しかし、DNAの一部として種のマーカーと認められる有効な部位がなかなか求められず、分類に応用されるという実用化にはまだまだ時間がかかりそうである。一方で、DNAの解析という点では共通であるが、全く異なった発想で解析結果が分類に応用され始めている。DNAの非翻訳領域、特に3'と5'末端には、マイクロサテライトと呼ばれる2〜数塩基の繰り返しモチーフがあり、これらの数や種類が種間で大きく異なったり、また、同じ種のなかでも近親のものから離れるにつれて差異が大きくなることが解ってきた。実際に、畜産で実用化され、動植物の分類に応用され始めている。その話題のマイクロサテライトがパフィオのロスチャイルディアナムでも見つかったとのことで、今後、データーの蓄積と共に、分類や変種などの判別に応用されるのが期待される。ランにおいて、最新技術による研究は遅れていると言わざるを得ない。ようやくDNA解析が始められところに、一挙に最新技術による方法が登場したことになる。ここで紹介する論文は、研究が始められたばかりの結果ではあるが、一つの方向性を実践する第一歩として高く評価したい。また、今後の研究者の努力にも、大きく期待したい。(田中) |
絶滅危惧種とされるパフィオペディルム・ロスチャイルディアナムから43個のマイクロサテライトを分離 |
Isolation of 43 Microsatellite Loci from Paphiopedilum
rothschildianum, マレーシア、サバ州、コタ・キナバル、マレーシア・サバ大学、生物技術研究所 E-mail: ccegoa@yahoo.com |
Paphiopedilum rothschildianum は絶滅危惧種として知られるランの一種で、ボルネオ島のマレーシア・サバ州のとても小さな限られた特定の地域に自生している。Paphiopedilum
rothschildianumの遺伝子を解析し、その遺伝子内の特異的な変異を分析すると、 絶滅の可能性がある種が生存し続けるために必要な遺伝子の重要な要素を見出すのに有効な情報が得られるであろう。そこで、マイクロサテライト(Microsatellites)は、一つの集団の遺伝子を研究するにおいて、その内外の遺伝子の変異を見るのに用いられる重要なDNAの分子マーカーである。
その特異性はある特定の種が環境の変化からストレスを受けたときに、遺伝子レベルでの回復を特定づけるのに利用できるであろう。 |
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( 0.8% Agarose Gel: TBE: 75 Volts: 60 Mins ) DNA was extracted using a modified protocol based on Dellaporta |
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( 1.2% Agarose Gel: TBE: 75 Volts: 60 Mins ) |
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( 1.0 % Agarose Gel: TBE: 75 Volts: 60 Mins ) |
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43 Microsatellite Loci were characterized for the first time in Paphiopedilum rothschildianum, these comprise 34 terminal repeat sequences located at the 5ユ and 3ユ end and 9 internal repeat sequences. |
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5'-アンカードPCR 法は、あらかじめその種のDNAシーケンスデーターがなくても、ゲノムからマイクロサテライトが効率よく、短時間で、さらに、低いコストで分離・解析できる方法であることが示された。この実験では43個のマイクロサテライトが分離され、解析された。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
参照 1. Dellaporta S. L., Wood J., Hicks, J. B., 1983. A Plant DNA Minipreparation: Version II. Plant Molecular Biology Reporter 1: 19 - 21. 2. Fisher, P. J. , Gardener, R.C., Richardson, T.E., 1996. Single locus microsatellites isolated using 5ユ Anchored PCR. Nucleic Acid Research. 24: 4369 - 4371 3. Kumar, S. V., Tan, S. G.,Quah, S. C., Yusoff, K. 2002. Isolation and characterization of seven tetranucleotide microsatellite loci in mungbean, Vigna radiata. Molecular Ecology Notes 2: 293 -295. 4. Sambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. 1989. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, CSH, NY. |
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This project is funded by the Malaysian Government
IRPA Grant No. 01-02-10-0054-EA0052 The authors are grateful to the Sabah Parks Authority for providing specimens of Paphiopedilum rothschildianum from their in-situ conservation facilities at Poring and Kinabalu. |
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