冬の山野では、春蘭は厚く散り積もった落葉の中で冬を過ごします。
冷風も太陽光も届かない遮光された静かな環境で冬を過ごします。
殆ど活動を停止した休眠状態で厳しい冬を過ごすのです。
通常蘭舎での栽培は、寒風、乾燥、冷温と蘭にとっては、大変厳しい環境です。
この様な環境から蘭を少しでも自然環境に近い状態で栽培したいと
考えられた栽培方法が休眠栽培です。
冬の休眠管理は寒い時期の戸外作業を少なくし、
栽培管理を楽にする目的で、考え出された栽培方法でも有ります。
厳冬期の1月〜2月の2ヶ月間、ラン舎の遮光を厚くし採光は行わず。
日中の蘭室の低温保持と湿度を保つのがポイントです。
採光せず、遮光して蘭室の温度を低温に保つ事で鉢の用土の乾燥は抑えられます。
潅水も月に1〜2回湿り気を与える程度に灌水し、施肥を控え
蘭培養土の微生物の活性を抑制し、蘭の生育を抑制させます。
灌水を制限することは、気温の低下と共にランの葉や根の活動を押さえ休養させる事で、
この状態を続ける事、ラン植物体の活動が静止し休眠を取ることになります。
蘭室の目張りを確実にして寒風の吹込みを防ぎますが、
換気は必要です。
比較的暖かい日中に天窓や南側の窓を少し開け室内の換気をします。
北風の寒風が吹き込むと、
蘭に寒風が当たり凍結を起こします。
自然界では地熱と合間って自然な解凍が行われますが、鉢植えでの栽培は
後に葉痛み等の障害が残ります。
灌水を控え極寒の環境で採光を採ると葉が黄ばんで来ます。
葉焼けとまでは行きませんが、蘭の開花時、花とのバランスが取れません。
採光も太陽の直射が当たると葉焼けを起こし其の部分の葉が黒く変色します。
葉焼けが極狭部であれば、其の部分の葉枯れで済みますが、
3分の1以上の及ぶと夏を越す事が難しい事も有ります。
葉全体に及ぶ大きな葉焼けでなければ春には新子が出ます。
冬季は蘭も殆ど活動していません。
採光、灌水、を控えて
施肥は活力剤も含め施用しません。
この休眠栽培は2月一杯続けます。
3月初旬、春の日差しも暖かくなったら休眠管理を終了します。
休眠栽培では、日覆いを厚くし、暗くしていまいたが、
休眠明けからは、採光、通風、灌水、施肥、消毒を行います。
先ず丹念に灌水をし蘭に活動を促します。
鉢の中に溜まった不要物を洗い流す様にタップリ灌水し
新しい新鮮な空気で鉢内を換気して根に活力を与えます。
休眠明けと共に新芽も活動します。
地表下にランの保管場所が作れる環境では、
厳冬期も地熱により均一の温度と湿度が得られ最適な休眠環境が保てます。
春蘭の加温栽培に付いて
蘭舎の加温栽培により冬季20度〜25度の加温栽培を行うと
新芽の出も早く生育も早く目にみえて増殖します。
しかし、
3〜4年を過ぎる頃より
急に成長が悪くなります。
特に問題は、加温栽培された株が無加温の棚に移った時に
成長が止ったり、新芽が出なかったり其の障害が顕著に現れます。
加温栽培された軟弱な春蘭は他所の無加温栽培では育ちが悪くなってしまいます。
趣味での栽培には加温栽培は控えたほうが賢明でしょう。