趣味は仕事の様に、仕事は趣味の様に

旧財閥系のゼネコン(総合建設業)の建築設計部門の責任者の一人として働いていた頃から
仕事に対してひとつのポリシーを持って業務を遂行していました。
それは、仕事の中に楽しさを作り出すと言うことです。

設計部門は仕事を企てる企画段階から、計画・実施設計・許認可・施工・メンテナンスと
全ての場面で関わりがある数少ない部署です。
関わる相手も、発注者・行政庁・社内他部門・施工現場・利用者と幅広く
管理職は折衝が主な仕事となります。
その為、ひとつのプロジェクトでは小さいものでも2年、大きいものでは4〜5年の長丁場になります。

プロジェクトの工程表を作成するのが仕事のひとつでしたが、
これは各場面毎の状況を読み、時間の置き換えて組み立てる難しさがあります。
私にとってはこの工程表の作成はゲーム感覚で、一旦作ったものを
現実の世界で押さえていく面白さ・楽しさがありました。

手前味噌で恐縮ですが、良く営業部門の友人に
「Sの作った工程表は、土地の払い下げまで有ったのにドンピシャだったな」
などと、褒められたものです。


* * *

数年前、ブラジルで一人の蘭愛好家にお会いました。
蘭歴が70年で今では引退されていますが、生き字引と呼ばれている方でした。
趣味の会のことが話題になり、彼の長年の経験を披露してくれました。
記憶が定かではありませんが、数字は大体合っていると思います。

「100人の蘭の愛好会があるとすると、会合に参加するのは半分の50人、
その50人の内、運営に参加するのは10〜20%の5〜10人、
その5〜10人の内、会を実際に纏めていくのは2〜3人さ」

ブラジルで幾つもの会の顧問をしていた経験から出た言葉でしたが、
「どこの国でも蘭に限らず趣味の会は同じだな〜」と妙に感心しました。

* * *

今まで六つの蘭の愛好会に参加し一部は運営にも携わって来ましたが、
設立時のメンバーの意向がその後を支配すると言われている通りと思います。
大きく分けて、内に篭って会員だけで楽しむ会と、
外部に向けて積極的に情報発信していく会があります。

私は前者も認めますが、後者の方を評価します。
ボランティアで多くの時間を費やし、新しい試みや行動は
会員だけでなく、広く影響を与えます。

意見の違いや価値観の違いはお互いに認めつつ
切磋琢磨して議論し、新しいことにチャレンジすることは、
蘭の文化の向上に少なからず寄与すると思うからです。

そんな会の運営での進め方は「趣味は仕事のように」です。
ともすれば趣味だからといい加減になり易いのですが、
運営自体は仕事と同じ感覚で緊張感を持って行うことにしています。

組織の中で働いたことのある人は、組織の動かし方・人の活用方を
理解出来るのですが、そうでない人はスタンドプレーが目立ちます。
肩書きが好きな人、何もしない人、文句だけ言う人などいろいろです。
とは言っても所詮は趣味の会なので、楽しさが一番重要です。

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最後にひとつ気に成っていることを書きます。
それは趣味の会はボランティアで成り立っているのですが、
ボランティアと言う言葉を知っていても意味を理解していない人を見かけます。

英語の"volunteer"は「志願兵」の意味ですが、「自主性」「無報酬」が大事な要素です。
言葉を変えると「見返りを期待しない愛」とも言えると思います。
自分の都合を優先したり、部署の損得で判断するのは考えものです。


(特定の会の事では無く、一般論として書いています)

(2006.12.17)
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