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コルヒチン処理をした株の開花状況 
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開花状況(2019/2/5現在) 

コルヒチン処理をした株と、無処理の株が咲き始めました。
コルヒチン処理株:奇形花は、21株中1株
無処理株:11株中0株

開花したコルヒチン処理株は生育が早く、株も大きめで、花の弁質が厚いものが多い。
識者の話では、4倍体だけが残って、ほかの物は順調に育たなかった可能性が高いとの事。

奇形花のリスクが高く無さそうなので、通常販売することにしました。
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<以下、2018年2月掲載の記事です>

コルヒチン処理と「実験苗」
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「ナシ属植物の倍数体の作出方法他」
asta*muse より

今回販売の「コルヒチン処理苗」は、実験的に作成したものです。
通常2倍体同士の交配では、100株咲かせて特に優れた個体は「1〜2株」です。
その優れた個体の殆どは「4倍体」と思われる株や花の大きさとなっています。

一方メリクロンでコピー株を作る際に、コルヒチン処理をして
4倍体を作る方法も広く知られています。
4倍体の個体は、細胞が約15%大きくなり、株や花が大きくなるのです。

今回のは、シブリング・クロスをコルヒチン処理して、優良個体を得る実験苗です。
出来れば全てを手元で咲かせて確認したかったのですが、栽培ペースには限りが有り、
お客様の協力を得てデータの収集を図ることとしました。

そんな訳で、お買い求めの株が開花した際には、
「花画像と花サイズ」をメールでお送りください。

(花サイズ:花の幅×高さ 単位:mm)
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今回販売するコルヒチン処理苗は次の通りです。
株数は、各10株の限定数販売です。
未処理苗と区別するため、番号の後に「a」を付けています。

(ST-207a) C.walkeriana tipo 'Baron' x flamea 'Portinari'        2N x 2N
(ST-208a) C.walkeriana tipo 'Cinquentenario' x tipo 'Satox Super'    2N x 4N
(ST-209a) C.walkeriana tipo 'Abandono' x tipo 'Satox Super'      4N x 4N
(ST-210a) C.walkeriana tipo 'Abandono' x tipo 'Cinquenterario'     4N x 2N
(ST-215a) C.walkeriana tipo 'Cinquentenario' x perola 'Manaley Picote' 2N x 4N

※倍数体の表記は、「4Nと思われる」の意味で、顕微鏡で確認はしていません。
Cinquentenarioは、4Nかも知れません。

2N x 2N → 2N ⇒ 4N
2N x 4N → 2N+3N+4N ⇒ 4N+6N+8N
4N x 4N → 2N〜6N ⇒ 4N〜12N

自然界では、12倍体も確認されているようです。
問題は、6N以上の倍数体は、花が小さくなる事例が有るそうです。
全てが小さくなる訳でも無さそうなので、どんな花が咲いてくれるのか楽しみです。
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コルヒチン処理苗(左)と、未処理苗(右)のラベル

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コルヒチン処理

コルヒチン(colchicine)とはユリ科のイヌサフランの
種子や球根に含まれるアルカロイドである。
リウマチや痛風の治療に用いられてきたが、毒性も強く下痢や嘔吐などの副作用を伴う。
また種なしスイカなどの倍数体植物種の作出にも用いられる。
(wikipediaより)

植物の成長点では、盛んに細胞分裂が起こっています。
コルヒチンは、この細胞分裂中の細胞の、紡錘糸形成を阻害する働きがあります。
紡錘糸が出来ないと、新しい細胞を作るために複製されたDNAが
そのまま入ってしまうことになるので、DNA量が2倍の細胞が出来ます。

この細胞が、通常の体細胞分裂をどんどんくり返していくと、
倍数性の植物体が形成されます。
(植物資源科学分野より)

※専門業者の話では、コルヒチン処理を行うと、約6割が変異を起こすと言う。
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3倍体

植物体は母方由来と父方由来の染色体セットの
2種の染色体セットをもっています
(そのため2倍体と言います)。成長の基本である細胞分裂では、
2セットの染色体が倍加し、それらが正確に2等分されますので、
娘細胞の染色体セットの数は2と変わりません。

しかし、自然の条件でも頻度は少ないのですが、
発生の初期に倍加した染色体セットが2等分されないで
4セットの染色体をもった細胞ができ、これが植物体になることがあります。
4倍体となりますが植物種としては同一です。

4倍体植物は正常な減数分裂をし、受精、種子形成をして次世代は
4倍体を保ったままとなります。
2倍体植物と4倍体植物とが交配すると2倍体植物の卵子・精子(1倍体)と
4倍体植物の精子・卵子(2倍体)とが融合するので3倍体となります。

普通の細胞分裂には支障がありませんから3倍体の植物体は正常につくられ、
花も咲きます。植物種としても同一ですから種子植物です。

ところが3倍体では卵子・精子形成のときにおこる減数分裂が正常に行われませんので、
正常な配偶子ができません。そのため種子形成の前提である受精・胚発生が
起きないので正常な種子ができないことになります。

3倍体に種子ができないということは植物種の問題ではなく、
減数分裂がうまくいかないだけなので種子植物であることには変わりはありません。
(JSPPサイエンスアドバイザー  今関 英雅)

※銘花 C.walkeriana tipo 'Feiticeira'は稔性が低く、3倍体と言われています。
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(2018.2.1 追記:2019.2.6)