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雫(しずく)個体の解説
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天使の雫(しずく)」って何ですか? どこにあるのですか?

ワルケリアナの愛好家で無くても知っている有名個体が「フィッチセイラ」ですが、
元々はそのフィッチセイラのペタルがオーバーラップして出来る
「水滴状のスキマ」を指して呼んでいます。
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C.walkeriana tipo 'Adonis Kawakami'
(Adonisは、Feiticeiraのメリクロンと思われます)

”The World of C.walkeriana & Hirookas Collection” 誌に
掲載した記事から(一部加筆修正)
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C. walkeriana fma.albescens 'Poliahu'と「天使の雫」

本書の表紙の花C. walkeriana fma.albescens 'Poliahu'は、
雫個体では初めてのアルベッセンスです。
この個体が評価される理由は、一説には日本とブラジルで数十個体は
あると言われている雫個体ですが、
それらは全てチポかペローラ系でそれ以外のフォルマでは初めてだからです。

C. walkeriana tipo 'Feiticeira'こそが「天使の雫」と言う言葉を生んだ個体で、
天使の雫の代名詞となっています。
何を指してそう呼ぶかと言うと、左右の基部がやや欠けたスペード型のペタルが
オーバーラップして出来る隙間を称して「天使の雫」と呼んでいます。

Feiticeiraと一言で言っても単純な話ではありません。

Feiticeiraが発見された場所は、ベロ・オリゾンテ近郊の
セチ・ラゴアス(Sete Lagoas)です。
(perola 'NemSempre'も同じ地名で見つかっています)
発見年は諸説あるようですが、1973〜78年は間違いがないようです。

Feiticeiraはブラジルのエキラビ社でメリクロン苗が作られが、
苗の生育が難しく岩下蘭園に渡り、そのメリクロンの開花株や
未開花株が日本にも渡ったと思われます。
メリクロン変異株に'Mirian Suzuki'や'Feiticeira Iwashita'があるようです。

(AdonisもFeiticeiraのメリクロンと思われるのでここではFeiticeira=Adonisとします)
メリクロンしても全てが雫の花にならず、所謂「先祖返り」して
普通のペタルの形でオーバーラップしない個体があります。
ブラジルでメリクロンされた個体には別々の名前が付いているので注意が必要です。

・チポの系統はFeiticeira系のメリクロンやシブリング・クロス
・ペローラ系では、所謂ハワイ系ペローラのメリクロン変異や4倍体等
・ハワイ系ペローラとFeiticeira系の交配
・ナトラルのスペード型ペタル個体

Feiticeiraは普通に咲かせれば必ずオーバーラップし、
「天使の雫」が形成されます。
稀にオーバーラップしない事がありますが、
それは株分けした後の花であったり、
栽培に問題があるとか特殊な事情によります。
もうひとつ考えられるのは、メリクロン変異してペタルは
スペードの形だけどオーバーラップしない個体があるかも知れません。
何れにしても、『Feiticeira=スペード型ペタル=オーバーラップ=天使の雫』と
考えて間違いありません。

蕾の先端が割れる「先割れ現象」が起きると、
その花のペタルは100%スペード型になりますが、
オーバーラップするかは分かりません。また「先割れ現象」が
起きずにペタルがセペード型になる個体もあります。

整理すると
Feiticeira =蕾の先割れ現象= ペード型のペタル+オーバーラップ
Poliahu =蕾の先割れ現象=スペード型のペタル+オーバーラップ(ケースバイケース)
Rouge Magic No.1 =普通の蕾=スペード型のペタル(オーバーラップしない)

必ずオーバーラップするのは、ナトラルのFeiticeira以外にも幾つか出現しています。
また、オーバーラップしたりしなかったりする個体も多くあります。
そのためオーバーラップした花は「天使の雫」、しない花は
単に「雫」と呼んで区別する考え方もあります。
花の状態を区別するする方法なので分かり易いのですが、

FeiticeiraやPoliahuなどをフォルマでグループ分けする方法があります。
植物分類学のルールに則る必要があるので、
蕾の先割れ現象や単にオーバーラップするとかでは括れません。
それはペタルの形状がスペード型に変異している現象だけに
限って分類する方法です。
スペードの英語は、spadeですが、ラテン語では、spatha(スパタ)ですので、
仮に名付ければ"fma.spatha"となりますが、もっと良いネーミングがあるかも知れません。

ペタルがオーバーラップしても、ペタルの形がスペード型でないものは、「雫」の対象外です。
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用語解説


ペタルの基部がやや欠けたスペード形に変異し、
その左右のペタルがオーバーラップして出来る隙間を称して「天使の雫」と呼ぶ。
元々は、C. walkeriana tipo 'Feiticeira'の花形を指していたが、
最近は似た形状の花が増えて、「オーバーラップしない隙間」を雫と呼ぶ人もいる。
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(2018.2.1)