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シンクエンテナリオとラピス・ラズリ
Ciquentenario & Lapis Lazuli
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個体名「ラピス・ラズリ」と「ラピス・ルージュ」は、オリジナル交配の
ST-57とST-61からセレクトした、セルレアとチポです。

(ST-57) C.walkeriana tipo 'Satox No.412' HCC/AJOS x tipo 'Cinquentenario'  
(ST-61) C.walkeriana tipo 'Satox Super' AM/ACWJ x tipo 'Cinquentenario'

この2交配から出たセルレアに「ラピス・ラズリ, Lapis Lazuli」を、
チポに「ラピス・ルージュ, Lapis Rouge」の名前を付けています。

何故チポとセルレアが咲くのかを解説した記事を紹介します。
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全日本蘭協会(AJOS)の会報に掲載した記事から
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後藤賞を受賞して


C. walkeriana fma.coerulea 'Lapis Lazuli #8'
AM/AJOS

佐藤 悦朗 Etsuro Sato


後藤賞を頂いたcoerulea個体は、
紫紅色の所謂チポ(tipo)同士の交配から生まれたcoeruleaなのです。
なぜtipoからcoeruleaが咲いたのかを説明するには、
まず2002年のブラジルに遡ります。

2002年5月、初渡航のブラジル、ベロ・オリゾンテ市郊外のレオナルド邸の
栽培場で出迎えてくれたのは"あの個体"でした。
それまでに見た事の無い極大輪のtipoは、
テーブルの上に悠然と置かれていました。
ブラジルの栽培方法を見学し、記念にと幾つか株を分けて頂き
「他に欲しいものは?」と聞かれ、
ダメもとでと、"あの個体"をお願いしました。
すると二つ返事で快く分けて頂けることになり日本に渡る事になりました。

その個体は、Cinquentenirio(シンクエンテナリオ)と長い名で、
SOBH(ベロ・オリゾンテ蘭協会)の50回目の蘭展でグランプリを獲り「50周年」を
意味するポルトガル語が名付けられていました。
(後年、現地の蘭友に門外不出の秘蔵株で有った事を聞かされました。)

2003年3月に横浜で開花したこの個体の花粉を乗せた
C. walkeriana tipo 'Satox Super' AM/ACWJは、1995年12月の交配の
C. walkeriana fma. semi-alba 'Takenaka' × fma. coerulea 'Edward'の
子供で、この兄弟は全てが紫紅色のtipoでした。

Cinquentenarioはcoerulea同士から出たtipo(F3)と聞いていたので、
両親にcoerulea因子を持っているから確率は低くても
coeruleaが咲く筈と密かに期待していました。
2008年のサンシャイン蘭展にY氏が出品した
C. walkeriana fma. coerulea 'Blue Impulse'が
この交配の開花1号で、しかも大輪濃色のcoeruleaでした。

正に"青い衝撃"でお褒めの言葉と共に「なぜチポからセルレアが咲いたの?」と
多くの方々から質問攻めに遭い、店の準備が中々進まなかった嬉しい記憶があります。
今回の受賞株はこの兄弟で、2012年のサンシャイン蘭展でAMを頂き、
今回の栄誉に浴する事が出来た次第です。

ブラジルでの出会いが新しい交配を生み、ワルケリアナ・セルレアに
新たな世界が開けたと言っても過言ではないでしょう。
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C. walkeriana tipo 'Cinquentenario'
(2018.2.1)